建築家・毛綱毅曠氏を巡る釧路の旅

建築旅日記

旅の目的

釧路で毛綱毅曠氏の建築作品を巡る2日間の旅をしました。
毛綱氏を初めて知ったのは1998年、建築を学び始めた頃。
今回は展覧会「記憶を結び、共生の未来をイメージする。没後20年毛綱毅曠の建築脳」をきっかけに、釧路市内の毛綱作品を再訪することにしました。


1日目のルート

NTT DoCoMo 釧路ビル → 北海道釧路芸術館 → 釧路フィッシャーマンズワーフMOO / EGG → 反住器 → ふくしま医院


NTT DoCoMo 釧路ビル

初めて訪れた建物で、近未来的な印象が強いビルでした。外観はメタリックシルバーで輝き、角のアールや丸い窓の配置が絶妙にリズムを作っています。低層部分のこげ茶色と上層部のメタリック感のコントラストが、歩いているだけでは想像できない意外性を感じさせます。
少し離れて振り返ると、光の反射で色味が変わり、見る角度によって表情が変わるのも面白い。歩く人々の視線を自然に誘導するようなデザインだと感じました。

近未来的なデザインが目を引くNTT DoCoMo釧路ビル。角のアールと丸窓、メタリックシルバーの外観が特徴

北海道釧路芸術館

象設計集団設計の建物ですが、今回の旅の目的は「毛綱毅曠の建築脳」の展覧会です。建物自体もアプローチからして優雅で、入り口の空間に足を踏み入れると、自然光の入り方や外壁のテクスチャーに心を奪われました。
展覧会の展示では、毛綱氏の作品がどのような思想で設計されているか学べ、20年前の自分が感じた「衝撃」を今再び追体験するような感覚でした。

象設計集団設計の北海道釧路芸術館。展覧会『毛綱毅曠の建築脳』開催中で、建築思想を感じられる空間。

釧路フィッシャーマンズワーフMOO / EGG

釧路川に面した複合施設で、外観は港町の雰囲気を反映しています。川側の外壁は白鳥が翼を広げたように見え、近づくとその形状や素材の選び方に遊び心を感じます。
建物内はスロープや吹抜けで釧路の都市構造を再現しており、歩くごとに視線が上へ、奥へと導かれる設計になっています。1998年に訪れた時と比べて、より街の景観との調和が感じられ、体験型の空間デザインに感心しました。

釧路川沿いに建つ複合施設。白鳥が翼を広げるような外観デザインと、都市構造を意識した内観が魅力。

反住器

母親のために建てられた住宅で、3つの箱を入れ子構造にした設計は圧巻です。外観は洗練されてスタイリッシュ、内観は複雑ながらも明瞭で、まるで建物自体がパズルのように組み合わさっています。
個人宅なので中には入れませんでしたが、外観だけでもじっくり眺めることができ、その緻密な設計に感動しました。小さな箱の重なりや角度の取り方、光の入り方を観察していると、設計者の思考や生活への配慮が見えてくるようでした。

母親のために建てられた毛綱毅曠氏の住宅。入れ子構造(マトリョーシカのような設計)が印象的。

ふくしま医院

晩年の作品で、2000年に建てられた医院です。外観は柔らかい色合いでかわいらしくまとめられており、訪れた瞬間、緊張感のある医療施設ではなく、地域に溶け込む温かさを感じました。
内部にはコンサートホールがあるとのことですが、コロナ禍のため今回は外観のみの鑑賞。外壁の素材感や窓の配置により、建物全体が軽やかでリズミカルに見えるのも印象的でした。

追記
2023年7月に閉院。現在は一棟貸しの宿泊施設
**霧ノ音─KIRI NO OTO─**として活用されています。
平日1泊12万円。
建築として泊まって体験してみたい気持ちはあるものの、
ぼっち貧乏の私には、なかなかハードルの高いお値段です……。

晩年の作品であるふくしま医院。外観は柔らかい色合いで地域に溶け込むデザイン。

2日目のルート

釧路市立博物館 → 釧路市立幣舞中学校 → 釧路キャッスルホテル


釧路市立博物館

外観はタンチョウが羽を広げたようなデザインで、春採湖を見下ろす立地との調和が素晴らしい。二重螺旋階段はDNAの二重螺旋を思わせ、上下動線の美しさとデザイン性を兼ね備えています。光の差し込み方や階段の影の落ち方など、細部に目を向けると何度も見返したくなる建物です。

タンチョウが羽を広げた外観が特徴の釧路市立博物館。

釧路市立幣舞中学校(旧名:釧路市立東中学校)

毛綱氏の母校で、旧名は東中学校。アーチは7本(計画は12本)で、間隔や配置を想像する楽しみがあります。設計の工夫や予算との折り合いを思いながら見ることで、単なる学校建築ではなく建築家の思考を感じられました。

毛綱氏の母校である釧路市立幣舞中学校。アーチの数や配置に建築家の遊び心を感じられる。

釧路キャッスルホテル

外観の強烈さにまず圧倒されます。初めて見た時の驚きが蘇り、時と共に違和感に慣れてきたものの、やはり個性的な存在感が際立っていました。2015年に内装がリニューアルされているため、外観のみの鑑賞でしたが、建物のスケール感とデザインの大胆さは十分に楽しめました。

外観が強烈で個性的な釧路キャッスルホテル。大胆なデザインが印象に残る作品。

まとめ:毛綱作品を巡る意義

展覧会と建物巡りを通じ、毛綱毅曠氏の建築世界を体感できました。建築は文化の一部として残るまでに時間がかかります。モダニズムやポストモダン作品が耐震性などで壊されていく現状を考えると、現存しているうちに見て回る価値があります。
釧路の毛綱作品は、観光や建築学習の両方で楽しめる文化資産です。今後も現存する作品を訪ね、建築文化の豊かさを未来に伝えていきたいと思います。

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